前のページで信託という仕組みの中には金銭信託と呼ばれるものあることを簡単にご紹介しました。ただ、抽象的な書き方だとイメージが湧きにくいと思うので、このページでは具体的な商品を例に考えてみましょう。
具体的にはみずほ信託銀行の貯蓄の達人という商品を見てみましょう。預金金利に当たる配当が、比較的良い金銭信託です。
あ、ちなみに、特にこの金銭信託をおすすめするわけではありません。たまたま見つけた商品と言うだけです。また、文中で使っている金利は、2014年1月現在の物を使っています。

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「貯蓄の達人」の特徴
さて、まずこの商品がどんなものか見ていきましょう。
みずほ信託銀行のサイトによると、「実績配当型の金銭信託」なのだそうです。顧客の資産を運用して配当を出すことを目指すのですが、運用如何で配当金が変わるということですね。もっというと、元本割れも考えられるという商品です。
具体的なリスクに関しては、次のような説明があります。

この信託が具体的にどんな運用をするかというと、次のようなもので運用するそうです。
主に自動車ローンやショッピングクレジット債権、住宅リフォーム資金の貸付金、住宅ローンなどを裏付資産とした信託受益権などに投資
凄く大雑把に言うと、ある程度信用できそうなところにお金を貸し付けるという運用をします。投資家からお金を集めてきて誰かに貸すと言う意味では、銀行預金と似ていますね。配当が実績と言うのが大きく違う点ですけどね。
ちなみに、実際どのくらい儲かるかですが、「予定配当率」という数字が示されています。これはあくまで予定ですが、一つの目安にはなりますね。
これを書いている時点では、予定配当率は次のようになっています。
●1年
10万円以上1,000万円未満:0.18%
1,000万円以上:0.28%
●2年
10万円以上1,000万円未満:0.24%
1,000万円以上:0.34%
●5年
10万円以上1,000万円未満:0.35%
1,000万円以上:0.45%
普段、銀行の預金金利に興味が無い人にはわかりにくいかもしれませんが、これはなかなか良い条件だと考えて良いでしょう。少なくとも、メガバンクの定期預金などと比べるとはるかに良い条件です。
例えば、みずほ銀行のスーパー定期に300万円未満で2年預けた場合、金利は年0.030%しかつきません。「貯蓄の達人」の予定配当が1,000万円未満で0.24%ですから、同じ期間のみずほ銀行の定期預金だと8分の1でしかないのです。
ただ、住信SBIネット銀行の定期預金と比べると、ビックリするほどの差とは言えないようです。住信SBIネット銀行の2年定期の金利は、100万円未満の場合でも、年0.170%と言う金利がつきます。もちろん、「貯蓄の達人」の方が条件は良いですが、大きな差とはいえないでしょう。
そもそも「貯蓄の達人」の配当は、あくまで予定です。実績次第ではどうなるかは分かりません。元本保証ですらありません。
その一方で、住信SBIネット銀行は定期預金ですから確定なのです。そう考えると、私だったら、住信SBIネット銀行の定期預金を利用したいですね。
個人向け国債とも比較してみよう
せっかくですから、個人向け国債とも比較してみましょう。今度は5年契約の方で考えてみます。
まず、個人向け国債を使って資産を5年間運用する場合は、2つの方法があります。一つは5年物の個人向け国債を買うことで、もう一つが10年物の個人向け国債を5年で売ることです。
個人向け国債の特徴は、決められた手数料を支払うことで、元本割れすることなく期間の途中で売却できることです。ですから10年物の個人向け国債を買っておいて途中で売却する方が有利なこと多いのです。
ちなみに、これを書いている時点での直近の個人向け国債の金利(年率)は、以下のようになっています。
●個人向け国債
5年物:0.17%
10年物:0.48%
●貯蓄の達人(5年)
10万円以上1,000万円未満:0.35%
1,000万円以上:0.45%
これを見ると分かるように、5年物の個人向け国債と比較した場合は「貯蓄の達人」の方が有利です。国債は圧倒的に信用力があるとは言え、金利にこれだけ差があると、「貯蓄の達人」を使うことにも魅力を感じます。
しかし、10年物と比較した場合は、個人向け国債の方が若干有利です。
ただ、上に書いたように、10年物の個人向け国債を5年で解約した場合は手数料を取られます。その結果どうなるかというと、金利は年率で0.384%になります。
ということは、1,000万円未満なら個人向け国債の方が有利で、それ以上なら金利の面だけで考えると「貯蓄の達人」の方が有利ということが言えそうです。
でも、この程度の差なら、個人向け国債を選びますよね。「貯蓄の達人」は実績配当ですから、これよりもリターンが小さいことも十分に考えられるからです。
10年物の個人向け国債についての補足
ここで個人向け国債に関してちょっと補足をしておきましょう。5年物の個人向け国債は固定金利の商品なのですが、10年物の個人向け国債は変動金利の商品です。
ですから、今後金利が下がる可能性が無いわけではありません。もちろん、逆に、金利が上がる可能性もあります。
現実的には、今の低金利からさらに金利が下がるとは思いにくいですけどね。まあ、可能性としては無い話ではありません。何にしても、知識としてはおさえておく方が良いでしょう。
ちなみに、どんなに金利が下がったとしても、個人向け国債の10年物は元本割れすることはありえません。その点は心配が要りません。
一見有利そうだから契約する人もいるでしょうけどね
最初の条件を見ると、「貯蓄の達人」は一見有利な商品に見えます。ですから、契約する人も多いのかもしれません。
でも、ここまで見てきたように、「貯蓄の達人」に金利が近いのに安全性が高い商品も存在します。金利差が大きくないのなら、そちらを選んだほうが良いでしょう。
というのも、「貯蓄の達人」には大きなデメリットがあるのです。
元本割れのリスクがある
既に見たように、「貯蓄の達人」には元本割れのリスクがあります。もちろんそのリスクは大きくありませんが、個人向け国債のように元本保証の商品と比べると不利であるのは明らかですよね。
そもそも大した金利がつかない商品です。そんな金融商品で元本保証ですら無いのなら、もうそれだけで候補から外すべきでしょう。
これだったら、個人向け国債か1,000万円以下の円建ての定期預金を選ぶほうが賢いでしょう。
原則として解約できない
2つ目のデメリットが、原則として解約できないという点です。みずほ銀行のサイトには、次のような文言がありました。
この商品は、原則として信託期間中の解約はできません。
ただ、どんな場合でも解約に応じないということでは無いようです。
やむを得ないご事情により、中途解約のお申し出があった場合は、ご契約単位で解約に応じることがあります。各ご契約について契約金額の一部を解約することはできません。
どういうケースで解約に応じるかは、定かではありません。ただ、解約に応じないケースがあるということを理解しておくのは大事なことでしょう。
年0.01%の手数料を取られます
実はこの「貯蓄の達人」は手数料を取られます。手数料を取られると言っても、追加で取られるわけでなく、預けていくお金から少しずつ引かれていくという仕組みです。
具体的な手数料は、次のように説明されています。
信託財産の中から信託報酬をいただきます。信託報酬は、信託元本に対して上限年率3%から下限年率0.01%の範囲内とし、運用成果に基づき計算します。
この手数料を考慮した上で、予定配当率というのは計算されています。ですから、手数料を差し引いた分だけ、配当が減るということでは無いのですけどね。
しかしながら、これだけ低い金利でこれだけの手数料を取られると思うと、ちょっとバカバカしいですよね。まあ、手数料を明示している分、貯蓄型の生命保険よりは、まだ良心的とも言えるのですが。
避けておくほうが無難でしょう
このようなデメリットがある事を考えると、「貯蓄の達人」を使うことは避けておいた方が良い商品かもしれませんね。私だったら、住信SBI銀行の定期預金だったり、個人向け国債だったりを使います。
元本割れのリスクが有る上に、解約できない可能性があるのではちょっと使えません。銀行の普通預金で金利ゼロのほうがよっぽどマシなのです。
知識を持つことは大事だと、改めて考えさせられる例でした。
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