外国債券は金利が高く、魅力的に見えます。例えば、これを書いている時点では、SBI証券が扱う外貨建て外国債券は年7%前後の金利がついていました。
でも、これらの債券は本当に有利なのでしょうか。本当に有利なら、金融機関など(機関投資家)が先に買ってしまい、私達が買うのは難しそうですよね。

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外国債券の金利は魅力的
ITの発達や金融の自由化によって、個人でも外国債券を買うことができるようになりました。そして、外国債券の中には、とても魅力的な金利のものも少なくありません。
例えば、これを書いているタイミング(2018年12月)で、SBI証券は次のような外貨建ての債券を扱っています。
- バークレイズ・バンク・ピーエルシー/ブラジルレアル建債券
- バークレイズ・バンク・ピーエルシー/南アフリカランド建債券
- ビー・エヌ・ピー・パリバ/インドルピー建債券
ちなみに、3本とも期間は4年程度です。また、税引前の金利は、それぞれ 年7.45%、、年7.70%、 年6.40%です。
これを書いている時点では、日本の10年もの利付国債の金利が、またマイナスになったと言うニュースが有ったばかりです。1 ですから、日本の金利と比べると信じられないような高金利の債券が存在することになります。
数万円から20万円程度で買うことができる
ちなみに購入するために、それぞれ、1,000ブラジルレアル、5,000南アフリカランド、10万インドルピーとあります。これは日本円になおすと、それぞれ、28,407円、38,186 円、157,615円ということです(Google のサイトで計算)。
この程度なら、庶民でも十分に買える値段ですね。インドルピー建ての債券だけは少し高いですが、それでも16万円程度です。
1年に7%の差はかなり大きい
日本国債を買った場合は、10年持っても全く金利が付きません。もっとも、現状だと、個人はなかなか国債は買えないでしょうけどね。
これに対して、外貨建て債券だと1年に7%前後の金利がつくわけです。この差はかなり大きいですよね。
円だての日本国債だと、100万円が100万円のままです。これに対して、外貨建て債券だと、1年で100万円が107万年になるのです。この差は大きいですね。
発行体の格付けはまずまず
ちなみに、この3つの債券の発行体格付は、それぞれ次のように書かれていました。
- A2(Moody’s)/A(S&P)
- A2(Moody’s)/A(S&P)
- Aa3(Moody’s) / A(S&P) / A+(Fitch)
ちなみに、発行体というのは、債券を発行する組織のことですね。国債なら国が発行体ですし、社債の場合は債券が発行体です。
比較のために日本の国債の格付けを調べてみました。S&Pの日本の長期ソブリン格付けは「A+」ということです。
ということは、発行体は3つの債券とも、それより若干悪い程度の評価ということです。
ちなみに、S&Pだと BBB以上 が投資適格債券であるとされています。ムーディーズならBaa以上ですね。
ということで、今回の3つの債券は、いずれも投資適格な債券だということですね。つまり、それなりに健全な発行体の債券なのです。
格付けがこれだけ高いのに、信じられないほど金利が高いわけですね。そう考えると、やっぱり有利な商品に思えてきます。
さて、本当にそうなのでしょうか。
インフレのリスクがある
ある通貨の金利が高いとしたら、インフレを心配する必要があります。というのも、現在インフレの傾向だったり将来のインフレが予想されるので、それを抑えるために高金利にしていると考えられるからです。
つまり、インフレになるということは、その通貨の価値が落ちるということです。ということは、金利を貰っても得とは言い切れないことになります。
インフレ率が高ければ、実質的には損をすることもありえます。
日本円でみると特に有利とは言えない
そして、インフレになると、その通貨は他の通貨に対して安くなります。つまり、日本円との関係でいうと、円高外貨安の状態になるわけです。
これって、日本円で見たら、目減りするということですよね。つまり、高金利のメリットは、インフレで相殺されてしまうわけです。
こうなると、結果的に為替リスクだけが残ることになります。つまり、日本円でみるとさらにメリットが無いことになってしまうのです。
つまり、一見すると高金利の通貨は有利そうに見えますが、特に有利とは言えないという事が言えるわけです。
もちろん、結果的に儲かることもありますよ。こんな単純に為替が動くわけではありませんから。でも、予想以上に大きく動いて、大損をすることもあるのです。
見た目の金利に踊らされてはいけません
このような傾向は、「為替は金利差を埋める方向に動く」と考えるとわかりやすいかもしれません。この考え方は、外貨で運用するときには非常に重要です。少し具体的に見てみましょう。
例えば、日本の10年もの国債の金利が1%だとします。そして、アメリカの10年もの国債の金利が3%だとしましょう。
このとき、両国の国債には2ポイントの差があることになります。だからといって、アメリカの国債の方が有利とは言えないのです。
なぜかというと、両国の物価などを考慮すると、為替が金利差を埋める方向に動く傾向があるからです。つまり、為替が金利差のメリットを打ち消すわけですね。
その結果、どちらが有利とは言えなくなるのです。ですからプロの投資家は、投資をする時点では、この2つの債券には大きな差はないと考えるわけです。
実際、日本の公的年金の運用計画を見ても、日本の債券と外国の債券の期待リターンには大きな差はありません。つまり、見た目の金利差が会っても、リターンに差はないと判断しているわけですね。これがプロの見方です。
この事実を知らない個人投資家を騙すのは簡単
ただ、個人投資家の多くは、ここまでの知識はありません。ですから、証券会社とか銀行の営業に、外国通貨の高い金利を見せられると心が動く人もいるわけです。
日本国債の金利0%で、外国債券が7%だとしたら、心は動きますよね。見た目の数字が大きいというのは、やはりインパクトがあります。
その結果、「為替の変動はちょっと怖いけど、買ってみようかしら」となって、ハイリスク・ローリターンの商品に手を出してしまうことになるわけですね。
つまり、知識が無いと、金融機関の営業に簡単に騙される危険があるのです。
外貨預金は更にひどい
ちなみに、外貨預金の場合は、更にひどい状況です。同じ通貨の債券やMMF などと比べても、更に金利が低い事が多いのです。
率直に言って、メガバンクが扱う外貨預金なんて、詐欺に近いとすら思うのですけどね。まあ、金融の世界では騙される方も悪いということになるのでしょう。
外貨預金を売る側が、嘘をついているわけではありませんから。ただ、外貨預金が有利に見えるように、顧客に見せる情報を取捨選択しているだけです。
逆に言うと、外国債券を買うのは、外貨預金と比べると遥かにマシである可能性が大きいと言えるでしょう。他の資産を組み合わせることで、リスクを小さくすることは可能ですし。
でも、「見た目ほど有利ではない」というのは、大事なことなので覚えておきましょうね。それをわかった上で買うのであれば、全く問題はありません。
- 長期金利、一時マイナスに…1年3か月ぶり 2018/12/28(金) 21:44配信 読売新聞 [↩]
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